今年もSAPIXの入試分析会に参加してきました。
毎年この時期に行われるこの報告会、受験パターンの組み方から各教科の最新傾向、そして親子の関わり方まで。
当日資料は著作権的に怪しいので、できる限り触れられる所は触れつつまとめました。
総括
受験を通じて得られるもの
これはSAPIXの先生が最初に話していたことですが、
「大変な受験勉強を最後までやり続けた経験は、今後の人生で必ず生きてくる」
とのこと。合否に関わらず、というところがポイントです。
私もこれは本当にそう思います。受験って、子どもにとっては人生で初めて「長期間、本気で何かに取り組む」経験になることが多い。その経験自体が財産です。
受験パターンの組み方
- チャレンジ校、適正校、安全校を上手に組み合わせる
- 1月受験や2月午後入試を活用して、通える学校の合格を確保する
- チャレンジ校の判断基準は「50%偏差値」が目安
この50%偏差値のあたりがボーダーラインで、合格者が一番多いゾーンだそうです。
学習アドバイス——「努力の価値」が上がっている
出題範囲の拡大は限界に近づいていて、地域間の差もなくなっている(ボーダレス化)。
どの学校でも、共通して問われるのは「基礎がしっかりできているかどうか」。
つまり、努力の重要性が増しています。
これ、言い換えると「やるべきことをちゃんとやれば報われやすい入試」ということでもあります。
一方で、志望校対策を急ぐ必要はないとも言っていました。まずは基礎学力が先、と。
基礎学力の重要さ
基礎知識と読解力の上に、分析力・思考力が複合的に問われるので、ごまかしが効きません。
親友の算数責任者もよく言っていますが、「土台のない建物は倒れる」というのは受験算数でもまったく同じことです。
テスト戦略——「欲張らない」
問題の取捨選択と時間配分がカギ。
全部解こうとするのではなく、取れる問題を確実に取る。テストの「戦い方」を知っている子は強い。
「愚直な取り組み」が最強
ここは個人的に一番刺さった話です。
塾以外の教材(オンライン含む)が数多くありますが、
学力は教材に触れた数ではなく、消化できた数で決まる。
教材の美味しいところ取り < 愚直な取り組み
正直に言うと、これは耳が痛い保護者さんも多いんじゃないかと思います。
あれもこれもと手を広げたくなる気持ちはよくわかります。
でも、結局は「1つの教材をどれだけ深くやり切れたか」で差がつくんですよね。
親子の関わり方
親が「欲張りすぎない」のは難しい
ここがまた、すごく共感できる話でした。
親の不安から、子どもへの要求水準がどんどん上がっていく。
たとえば、テストで90点を取れたとき——
- 子ども:「90点も取れた!」
- 親:「10点も失点した…」
同じ結果なのに、見え方がまるで違う。
子どもの自己評価を守ることは本当に大切です。
「10点失点した」ばかりを伝えていると、
子どもは「自分はダメなんだ」と思い始めてしまう。
6年後半、入試に向けて
おもしろかったのがこの話。
6年後半になると——
- 子ども:「合格すると思っている」
- 親:「不安な点ばかり気になる」
この温度差、どのご家庭でも起きるそうです。
そしてここで、不安に駆られてコテンパンに言ってしまうのは逆効果だと。
成長のコツとして挙げられていたのは3つ。
①前向きさ
②100%を求めすぎない
③「〜でないといけない」→「〜できたらいいな」に変える
これ、簡単そうに見えて、受験直前の親には本当に難しい。
しかし、メンタル面で子どもを潰さないために非常に大事だと思います。
会場アンケートで判明した事実
ここが今年の分析会で一番インパクトがあった場面かもしれません。
会場の保護者に、その場で挙手アンケートを取りました。
- 「子どもの受験への意識が低いと感じる」
- 「字が汚くて困っている」
- 「取り組み方の要領が悪いと感じる」
全て大半の保護者さんの手があがっていました。
……「うちだけじゃなかった」と、会場の空気が一気に和らいだのがわかりました。
SAPIXの先生いわく、「毎年この相談をいただくが、他のご家庭も同じですよとお伝えしても信じてもらえない。だから今回は会場で実際にやってみた」とのこと。
これは本当にその通りで、私自身も保護者の方から相談を受けるたびに「それ、ほぼ全員同じ悩みですよ」と伝えているのですが、なかなか実感として信じてもらえないんですよね。
目の前でたくさんの手があがるのを見ると、説得力が違います。
算数
全体傾向
近年は安定傾向で、典型的な問題が出題されています。ただし、簡単ではありません。
親友の算数責任者にも確認しましたが、「典型的=易しい」ではないんですよね。
むしろ、典型問題の”範囲”がどんどん広がっていて、「これも典型に入るの?」という問題が増えているとのこと。
広がりすぎた「典型問題」の範囲
具体的には——
- 計算問題でも平方の差の公式を利用するなど、数学よりの工夫が要求されている
- 立体切断は、立方体ではなく三角錐の切断が出題されるようになっている
- 食塩水の問題にひとひねり
単純に「パターンを暗記する」では太刀打ちできない出題が増えています。
注目すべき事項
- 剰余類(ある数で割り算をしたときの余に注目して考える)の問題が増加傾向
←近年、灘中がほぼ毎年出題&2026年東大理系大問6でも出題されたものです - 倍数の感覚を日頃から身につけておくことが重要
ここで紹介されていたのは以下のようなもの。
【倍数の感覚の例】
88、66、44、111——この中で仲間外れはどれ?
→ 111以外はすべて22の倍数。こういう「数字を見た瞬間にピンとくる」感覚が問われています。
【豊島岡の問題例】
単価と合計金額から、りんごの購入個数を求める問題。
| 桃 | 210円 | ← 7の倍数 |
| りんご | 180円 | |
| みかん | 105円 | ← 7の倍数 |
| 合計 | 2310円 | ← 7の倍数 |
桃・みかん・合計がすべて7の倍数 → りんごの購入金額も7の倍数になるはず → 180円×7個=1260円で正解は7個。
こういう問題は、日頃から倍数を意識する習慣があるかないかで、解くスピードがまったく違います。計算力の記事でも書きましたが、「数の感覚」が身についている子は本当に強いです。
解きやすくするための工夫
開成や栄光など一部の学校では、受験生が探索しやすいように記述や設問が工夫されています。たとえば回答欄のグラフへの書き込みを許容するなど、「作業しながら考える」余地が与えられている。
これは学校側の姿勢として好感が持てますね。
今後の受験に向けて
入試の大半は努力量を図るもの。センスやひらめきを求める問題はほぼない。
ただし、範囲は広く分量も多いため、詰め込みや過度な効率化には注意が必要。
試行錯誤を通じて着実に身につけることが大切、とのこと。
理科
全体傾向
物理・化学・生物・地学からほぼ均等に出題。求められるのは3つ。
①基本的な知識と解法
②実際に試す、作業する力
③問題の設定を読み取る力
見慣れない言葉が出てもパニックにならない
「硫酸銅五水和物」や「アナレンマ」など、一見ギョッとする言葉が出題されることがあります。
でも実は、解くために必要な知識や解法は塾で習っている範囲のもの。
大切なのは、見慣れない問題に出会ったときに固まらず、問題文の中からヒントを拾えるかどうか。
「時計を使って方位を調べる」のように、実際にやってみないとわからない問題もありました。
日常生活が理科の学力になる
ここは非常に印象的だった話です。
- 博物館に足を運ぶ、図鑑をよく見る
- TV番組 ブラタモリで取り上げられた宮古島の地下ダムが入試に出た
つまり、テレビや遊びの中でも「なぜ?」と考えたり、興味を持って調べたりする習慣が、そのまま理科の得点力に直結するということです。
理科は、机の上だけで完結しない教科なんですね。
国語
問題文章のテーマ
2026年は戦後80年にあたり、戦争をテーマにした文章が多く出題されました。
- イスラエルやイランなど「新しい戦前」——現在進行形の紛争を題材とした文章
(灘中で出題された詩も非常に話題になりました) - 太平洋戦争を現在の視点から振り返る問題
- 東日本大震災に関する問題
- 俳句や詩を通じて「言葉の力」を問う問題
2つの難しさ
① 読むことの難しさ
哲学ブームが続いています。中学入試の国語で哲学的な文章が頻繁に出題されるようになりました。
出題元として紹介されていた書籍は、
- 「嘘をつくとはどういうことか?~哲学から考える」
- 「中学生からの哲学『超』入門」
- 「聖書を読んだら哲学がわかった」
正直、大人でも難しい内容です。
文章レベルが小学生にとって限界に近づいており、
「難解な文章を読む粘り強さ」そのものが試されている印象を受けました。
② 書くことの難しさ
高度な思考力と記述力が求められています。
桜蔭中では、文章に根拠が明示されていない中で、自分なりに答えを見出していく力が問われていたとのこと。
基本に立ち返る
ただ、どんなに文章が難しくなっても、読解の基本的な所作は変わりません。
- 段落分け
- 時系列を考える
- 登場人物を整理する
ここは愚直にやるしかない。
結局、「基本をおろそかにしない」がすべての教科で共通する鉄則です。
今後に向けて
入試は、「この子は社会問題に関心を持っているか」を見ている。
- 世の中のことに広く目を向ける
- 日本文化や大人の常識を身につける
- 基本的な読解力を固める
- 難しい文章にも根気よく取り組む姿勢を持つ
国語は一朝一夕で伸びる教科ではありませんが、日常の中で「考える習慣」「読む習慣」を持っている子は、確実に力がついていくと思います。
社会
2026年の社会科では、大きく3つの力が問われていました。
① 地道な学習をしてきたか?
- 漢字を正確に書く努力をしたか
- 数値や知識を覚え続けてきたか(議員定数、関税の仕組みなど)
ここで出たエピソード。
開成の社会は、合格者平均点と受験者平均点の差がわずか3点。
つまり、社会では大きな差がつきにくい。「当たり前のことを確実にできるか」が問われている。
【対策として挙げられていたこと】
- 覚えた語句を、キーワードを含めて説明できるようにする
- 知識どうしを結びつける訓練をする
- 遠回りに見えても、身につく学習をする
② 与えられた情報を活用できるか?
- 選択肢の文章や表・グラフを隅々まで見たか
- 設問内の指示をちゃんと意識したか
思い込みで解くのは絶対にNG。問題が求めている情報を、問題文の中から正確に拾い上げる力が重要です。
算数の「テスト戦略」と同じで、「問題をよく読む」という当たり前のことが、結局一番の差になるんですよね。
③ 身の回りのことに目を向けてきたか?
ここが個人的に最も印象的だった社会のパートです。
世の中で起きたことを「自分ごと」として考える力が問われている。
- ふりかけの売上が過去最高なのはなぜか?
- 高速道路の速度の見直しはどういう背景があるのか?
- 「たんぱく質クライシス」とは何か?
さらに、衣食住の由来に思いをはせたことがあるか——
- 「松竹梅」の意味は?
- うなぎの蒲焼に東西の違いがあるのはなぜ?
SAPIXの先生はこう締めくくりました。
「社会科はこの世の全てが出題範囲。社会科は小学生を大人にする教科です。」
この一言、本当にカッコいいですよね。社会科の本質を一文で言い切っていると思います。
おわりに
2026年のSAPIX入試分析会を通じて、全教科に共通するメッセージが浮かび上がりました。
センスやひらめきではなく「愚直な努力」「世の中への興味」が合否を分ける
中学受験は、子どもだけでなく家族全体の成長の機会です。
この記事が、これから受験に向き合うご家庭にとって、少しでも参考になれば嬉しいです。
【国語の項目で紹介された本↓】










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